丹波の現状①


「旅する大地」が提供する、森とまちをつなぐ培養土“森育ち”。
その生産予定地の一つだった丹波市前山町の五台山は、今年の夏の集中豪雨によって土砂災害が発生し、立ち入ることができなくなってしまいました。
「旅する大地」では、地元住民の方々を中心に復興に取り組まれている模様をお伝えしていこうと思っています。
これを機に、少しでも多くの人が山の現状に関心を持っていただけれることを願って。

レポートは、五台山で住民参加型の森林整備に取り組まれている、中島彩さんのブログから抜粋しています。

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テクニカルボランティアの活動も一段落しました。
さて、今日はどう動こうか・・・。

五台山、狸穴の命水へ

ずっと気になりながら現実を見るのがコワくて行けずにいました。
住民参加型の森林整備、狸穴の名水(湧き水)を守る為に始まった活動。
災害二日後に五台山麓の現場を訪れ、
変わり果てた山の姿に呆然と立ち尽しました。
源流はどうなっているのだろう?水は変わらず湧いているのだろうか?
災害後の航空写真で見る限り、山頂付近に大きな崩れは見られません。
ただ、写真には写っていない小さな崩壊地は数知れず。
狸穴についてまだ何も情報が入っていない・・・行こう。

車が入れるのは途中まで。
この先は民家が無いため道路は崩れたまま。あの日のまま。

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山頂までの登山道をたどってみる事にしました。
沢ガニが沢山いた谷。
川沿いの道、急だけれど水の音が心地良く大好きな場所。
その面影はどこにもありませんでした。
大きく口を開いた谷底。傾れ落ち突き刺さるスギ・ヒノキ。
降り注ぐ太陽の光が痛い。
沢ガニがいない谷。

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その大きな崩落地を抜けると
驚く程穏やかな変わらぬ風景が開けました。
約600m登ると何事も無かったかのような山の姿が。
空っぽになっていた心に少しずつ何かが貯まって行くようでした。
小さな崩落地は幾つかあったものの山頂までの登山道は無事でした。
山頂で足を止める気になれず、そのまま狸穴の名水へ
あぁ、ここを水が走ったんだな・・・という流れの後が
だんだん深く、大きくえぐれて行きます。
でも確かに水音が近づいてきました。
不安、期待、不安、期待・・・
 
『あった!!!!』

えぇ、大声で叫びました。
側に立っていた碑は割れて流されていましたが
名水は以前と同じ岩の合間から滾滾と湧き出ていました。
両手ですくい、ゴクッと一口。
良かった。本当に良かった・・・
ヘタヘタと座り込みどれだけの時間、見続けていたでしょうか。

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『子供の遊べる山にしたい。』

活動当初どんな山にしたいか?の問いに皆の口から出た言葉でした。
ただでさえ山離れしていた子供達。
地区を襲った土砂災害、大量の流木。
今、子供達にとって『山』はどのような存在なのでしょうか。

私にとって『山』は『受け入れてくれる』存在です。
心許せる人が少なかった幼少期、居場所を求めていた学生時代、
そして全くの素人から7年間、業としての関わりを『受け入れて』くれた。
どう手をつけて良いのか想像も付かない風景をぼんやり眺めながら
ふと気付きました。
きっと今、私が『受け入れる』時なんだと。
この山の現実を。そしてこの山の行く先を。
何百年単位の『山時間』で考えれば
今回の災害はほんのクシャミにすぎないのかもしれません。
多くの事が吹き飛んでしまったけれど
将来がゼロになったわけではないのだから。
何かが出来るとは思わない。
けれど、側で山が進もうとする未来を全力で受け入れる事は出来ると思う。

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